第49章 進めたい関係
「す、すみません…!淫らな真似を……、」
真っ赤になった菫が胸の上から降りようとすると、杏寿郎はそれを止めたくなった。
杏「………………。」
だが、二人は夫婦でなければ許婚でもない。
先程までの触れ合いだって本来ならしてはならない事だ。
杏寿郎の手は空中で止まり、呆気無く愛しい体温は離れてしまった。
そして菫は自身の布団の上に戻ると正座をして長い謝罪を始めた。
杏寿郎はそれを聞き流しながら体を起こす。
「……なので、これからは杏寿郎様にもっとご満足頂けるよう、」
杏「菫さん。」
杏寿郎は菫の言葉を遮った。
杏(…駄目だ。流石にこの場で申し込むのは失礼だろう。誠意が足りないと思われてしまうかも知れない。)
そう強く思っているのに、菫を引き留められなかった事がどうしても耐えられなかった。
ぎゅっと汗ばむ拳を握る。
杏(だが、足りない。今のままでは…、)
『まだ耐えられる、ゆっくり進めよう。』と思っていたのに、恋仲などという有って無いような関係ではもう気持ちが収まらなくなっている事に気が付いてしまった。
杏「……菫さん、聞いてくれ。」
菫は大きな目で杏寿郎を見つめ、少し首を傾げながら頷いた。
それを見ると杏寿郎も正座をする。
その畏まった様子を見て菫は目を見開いた。