第49章 進めたい関係
杏「当たり前だろう!!!」
そうきっぱりと言い切ったが、菫の眉尻は依然下がったままである。
下がったままになる程、炭治郎の握り飯を褒めた杏寿郎の顔は良い笑顔だったのだ。
杏(……体と共に心も弱っているのだろうか。変に自信を失っているように見える。)
杏寿郎は菫の珍しい空気をしげしげと観察した。
杏「竈門少年には秘密だぞ。」
そしてそう前置きをすると、思い切ってその姿勢のまま菫をしっかりと抱き締めた。
杏「君の料理はいつでも一等美味い。君が居ないと困る。隊士としても君を必要としている。」
ぎゅっと抱き締めていると菫の体温が移ってくる。
それと共に杏寿郎の体温も届いたのか、腕の中にいる菫の空気が緩んだのを感じた。
「……ありがとうございます。」
菫は安心したように再び杏寿郎の胸に顔を埋め、そして、唐突にビクッと体を震わせると耳を真っ赤にした。
杏「……。」
杏寿郎はやっと菫がこの体勢に気が付いたのだと悟り、そのぼんやり具合いが珍しくて愛らしくて、堪え切れずに笑い声を上げた。