第49章 進めたい関係
「も、申し訳ございません!お気を遣わせました!すぐに任務の前のお食事を…、」
菫がそう言いながら慌てて上体を起こすと、杏寿郎は無意識に繋いだままの手を自身の方へ引っ張った。
「…っ」
当然菫の体はぐらつき、杏寿郎の胸の上に倒れ込んでしまった。
それは以前、恋仲でしかない自分達が『してはいけない事』と確認し合ったばかりの体勢であった。
「ご、ご無事ですか…!?」
菫が引っ張られた為に倒れた事を失念してそう心配するので、杏寿郎は声を上げて笑った。
杏「今日の任務は無い!見廻りは少年達が行くと申し出てくれたので甘える事にした!そして竈門少年が美味い握り飯を作ってくれたので腹は満たされている!!」
「………………そう、でしたか…。」
菫はそう呟くと肩の力を抜き、そこがどこかも忘れて顔を埋めた。
杏「………。」
杏寿郎は菫がすぐに顔を赤らめて退くだろうと思っていた為、留まった菫をどう扱えば良いのか分からず固まってしまった。
「………その、」
暫く経ってから菫は落ち込んだような声色で切り出した。
杏寿郎はその声色に心当たりが無くて、首を傾げながら言葉を促す様に菫の頭を撫でた。
すると菫が眉尻垂れた顔を上げる。
「竈門様のご飯は……どれ程美味しかったのでしょうか…。私は…、私が隊士として此処に置かせてもらっている意味は…まだ残っていますか……?」
杏寿郎は目を見開いた。