第49章 進めたい関係
「あの、」
杏「君のご両親に顔向け出来ない事はしないと約束する。」
そうきっぱり言うと、杏寿郎はただ菫の頬を優しく慈しむように撫でた。
「…………。」
菫はすぐに脱力した。
そして杏寿郎の手のひらに自身の手を重ね、柔らかく微笑む。
「杏寿郎様の手は熱いですね。杏寿郎様らしくて安心します。」
杏「そうだろうか。」
両手をそれぞれ繋いで微笑み合っていると強い幸福感を得られたが、少しすると菫は名残惜しそうに眉尻を下げて片手を離した。
「そろそろ朝餉を作りに行かなくてはなりません。」
杏「今日はゆっくりしていてくれ。」
菫は寝起きに『ゆっくりしていろ』と言われ、どうしてなのか理解出来ずに困った様に首を傾げた。
「そういう訳にはいきません。只でさえ竈門様のお世話をしていた時の記憶があやふやなのです。きちんと働けていたのかどうかも怪しいわ…。何時に此処へ来たのかさえ記憶が…、」
杏寿郎はそれが原因で今が夕方である事に思い至らないのだと分かり、尚更もっと休ませてやりたくなった。
しかし、どんなに把握出来ていなくても時間が経てば太陽は動く。
菫は暗くなっていっている事に気が付くとサッと青ざめた。