第49章 進めたい関係
杏「ああ。ずっと握っている。安心して寝てくれ。」
そう言って杏寿郎が優しく熱い手で菫の手を握ると、菫はふっと力を抜き、一瞬で眠りに落ちてしまった。
杏(もうとっくに限界だったのだろう。本当に我慢強い女性だ。)
杏寿郎はそう思うと心配なような、愛おしいような気持ちになり、前回は顔さえ見ないようにしていたにも関わらず、こっそりと近寄って額に口付けを落としたのだった。
―――
「……ん。」
菫が目を薄っすらと開けると色付いた陽が部屋に差し込んでいた。
「……………朝、焼け……?」
菫はぼんやりする頭で今が夕方なのではなく朝なのだと思った。
いつも起きるのが早朝だったからだ。
瞬きをしながらゆっくりと覚醒する。
すると、杏寿郎が隣で横たわりながら微笑んでいた。
「……きょ、うじゅろう、さま。」
杏「うむ、おはよう。」
杏寿郎は約束通りずっと握っていた手に力を込めると、少しだけ菫に近付いた。
すると、菫は肩を跳ねさせる。