第48章 青い彼岸花の薬
「ずっと苦しそうだったのに…、私何もできませんでした…。ごめんなさい…。」
そんな辛そうな声を聞くと杏寿郎は散々迷っていた腕をすぐに菫の震える体に回した。
杏「君の優しい声は聞こえていた。名を呼んでくれたろう。」
「…はい。」
菫はそう答えながら顔を上げた。
杏寿郎は密着した状態で菫に見上げられると何か良くない感情が湧いてきそうになり、一生懸命薬について考えた。
杏「今はまだ変わったと実感出来ていないな。鍛錬をするまでは分からないのかも知れない。」
「それではまずお食事を…、」
菫がそう言って胸の上から退こうとすると、杏寿郎は無意識に菫の腕を引いた。
「あっ」
菫は目を瞑りながら杏寿郎の胸に突っ伏してしまった。
そして、改めて杏寿郎を見上げてから顔を真っ赤にさせる。
そこは杏寿郎の胸の上であり、布団の上であり、そして杏寿郎の自室であり、大人の男女二人切りの空間だ。
「あ、あの、先程のは、感極まって…、」
菫はそう言いながら再び退こうとしたが、杏寿郎はそんな菫を優しく抱き締めてしまった。