第46章 再会
そして、不器用な父娘に優しく微笑みながら菫の隣に片膝をつく。
杏「俺も君をくれとお父上に頭を下げるべきだろうか。」
わざとそんな事を言って菫の顔を上げさせると、杏寿郎は菫に重國がどんな顔をしているのかを見せてやった。
「……お父様…………。」
威厳ある姿しか娘達に見せてこなかった重國は涙を流していた。
そこにあるのが嬉し涙では無い気がして、菫はハッとし自ら駆け寄った。
晴「菫…?」
重國は近寄らないのではなく、近寄れなかったのだ。
重「…菫、すまない。保身の為にお前を切り捨てた。合わせる顔がない。」
そんな事を言って背を向けてしまうので菫は眉尻を下げてしまった。
そこへ晴美と蓮華、杏寿郎も集まってくる。
「そんな…それは当然の決断です。私でも…誰でもそう致します。」
杏「……。」
杏寿郎は長引きそうな重國の態度にきゅっと口角を上げた。
杏「重國さんが要らないと仰るのなら自分が頂いても宜しいでしょうか!」
晴美と蓮華は杏寿郎のナイスアシストに微笑み合った。
対して重國と菫は目を丸くして杏寿郎を振り返る。
「きょ、杏寿郎様…、」
重「まだやるとは明言していない!!」
杏寿郎はその言葉ににこりと笑みを浮かべる。
杏「では清水家の一員である菫さんをそろそろ家へ入れさせてあげて下さい!」
重「……そうだな。すまなかった。」
結局杏寿郎の一言でその場は収まり、家族は家の中へと入った。
そして、その一連の流れを見ていた手伝いの者や警備の者は、菫が温かく迎え入れられた事と、男を連れてきていた事に暫くざわついたのだった。