第44章 青い彼岸花
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杏寿郎と俊彦と菫は東京に着くとふた手に別れる事になった。
俊「本当はもっと色んな話をしたかったのだけど…、」
俊彦はそう言いながら、初めは誘うつもりなど無かったものの一番頼りになった杏寿郎をちらりと見た。
俊「何だかんだ良い経験になった。本当に心の底から踏ん切りがつきました。」
「……それは何よりです。」
杏寿郎はそんな二人のやり取りを黙って見届けると菫の手をぎゅっと握った。
杏「では次は清水家で会うとしよう!早く報告に行きたいので名残惜しいがこれで失礼させて頂く!!」
菫は杏寿郎に公衆の面前で手を握られると顔を赤くしながら『失礼致します。』と言って頭を下げた。
杏「お館様のお屋敷に近付いたら目隠しをさせて貰う!すまないが許してくれ!」
「いえ。杏寿郎様がお話しされている間、お屋敷に置いて下さる事自体があり得ない待遇ですので。」
そう恐縮する菫を見ると、杏寿郎は眉尻を下げながら笑い、『そうか!』と言って菫の頭を撫でた。
(まさかお館様がただの隠の私にそんなご提案をして下さっていたなんて…。確かに毎日杏寿郎様のお側に置かせて頂いているけれど、継子な訳でもないのに…。)