第44章 青い彼岸花
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菫は途中で目隠しをされると、杏寿郎に『背中に乗ってくれ!』と言われた。
「そんな…蟲柱様にも親衛隊の方々にも殺されてしまうわ…。只でさえ杏寿郎様はお怪我をなされっ」
杏寿郎は目隠しをしながら後退る菫を問答無用で横抱きにすると地を蹴った。
「…っ」
杏「少し揺れるかも知れないが辛抱してくれ!」
菫は小さく返事をすると、感じた事の無い速度への不安から杏寿郎の首に腕を回してしがみついた。
杏「!!」
杏寿郎は首元に菫が顔を埋めると耳を赤くさせ、産屋敷邸まで黙りこくって菫を運んだのだった。
杏「菫さん、着いたぞ。」
「…あっ」
何時の間にか顔を埋めていた菫は、目隠しの結び目を解かれると驚いて杏寿郎の首元から顔を上げた。
すると今度は顔の近さに赤くなってパッと顔を伏せる。
「も、申し訳ありません。運んでくださりありがとうございました。」
杏寿郎はやっと自身と同じ気持ちになってくれた事に満足すると、ゆっくりと菫を地面に下ろした。
「……此処が…、」
杏「うむ!お館様のお屋敷だ!」
菫は喉をごくりと鳴らしながら立派な屋敷を見つめた。