第44章 青い彼岸花
医者曰く、その種をある手順で処理する事でとある効果が得られる粉が手に入るとのことだった。
その効果とは非常に危ういものだった。
弱った鼠に与えたところ、確かに元気になるのだが仲間を喰い殺すようになったのだ。
医者は慌ててその鼠を処理しようとしたが、何故か毒を与えてもどこを切断しても弱らない。
弱らないどころか、治ってしまう。
医「恐ろしいと思ったが、同時に素晴らしいと思ったよ。量にさえ気を付ければ万能薬になるのだから。」
医者は戸惑う先祖にそう言い、同じ医者だと知るとその種を分け与えたのだという。
杏「………………。」
「………………。」
俊「…………鬼を作る薬だ…何も知らない医者が鬼の始祖を作ってしまったんだ……。」
俊彦は呆然としながら呟いた。
まさか、数々の悲劇の元凶が患者を想う医者の良心だったなんて思ってもみなかったからだ。
藍「その後、先祖は東京へ行った時に化物を目撃した。幸い、持っていた薬か花の匂いが気に入らなかったらしく近寄って来なかったそうだが、それで確信したんだ。あの医者は "やってしまった" んだと。」
俊彦が喉をごくりと鳴らす。
菫も重大な秘密に触れて汗ばむ拳を握り直した。