第2章 炎柱の屋敷
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「……火事、でしょうか。」
菫は煤だらけの壁を見つめて呆然としながらそう呟いた。
杏寿郎は腕を組んで相変わらず笑みを浮かべている。
杏「これが君を招いた最も大きな理由だ!どうも俺に調理は向いていないらしい!!」
菫は納得したように小さく頷くと、杏寿郎に向き直った。
「お任せ下さい。好き嫌いはお有りですか?」
杏「さつま芋ご飯、さつま芋の味噌汁……芋が好きだな!鯛の塩焼きも好きだ!嫌いな物は特に無い!!」
「畏まりました。」
菫は食の好みを知れて喜びつつ、その感情を表に出さないよう気を付けながら書き留めた。
(精一杯作らなくては…。)
杏寿郎は菫の書き留める様子が鬼気迫るようだと言える程に熱心であった為、笑みを浮かべながらも少しだけ首を傾げた。
杏「君はとても真面目な人なのだな。」
仕事に関係の無い話題を振られた菫は、その親しい空気が非現実的に思えてすぐに反応出来なかった。
「……あ、いえ、当たり前でございます。炎柱様は自分の命の恩人ですので。」
その言葉に杏寿郎は目を丸くして組んでいた腕を解いた。