第2章 炎柱の屋敷
―――――――――
菫は屋敷につくと緊張しながら門戸を叩いた。
その手は軍手に包まれていて色の白い肌は一切見えない。
更に、目元は普段横に流している前髪で隠れ、体型は重ね着された服で誤魔化されている。
筋肉が付く箇所にはご丁寧に綿も詰められていた。
菫が息を忘れて返事を待っていると、すぐに中から人が出て来る。
その姿を見て菫は震えた。
杏「君が今日から世話を焼いてくれる隠だろうか!」
「はい…!」
炎柱、煉獄杏寿郎は菫の囁き声に目を丸くした。
低い声を出せない菫は声帯を震わせないように声を出したのだ。
杏寿郎は少しだけ間を空けたが、特に声について訊かずに菫を屋敷へ招き入れた。
杏「初めに屋敷内を案内しよう。特に入ってはならない部屋はないので、必要であれば一人でいるうちにも好きに見て回って構わない!」
「はい。畏まりました。」
杏寿郎がちらりと振り返ると、菫は早速熱心に部屋の場所を書き留めていた。
それを見て杏寿郎は口角をきゅっと上げる。
杏「ではまず初めに "問題の" 炊事場へ行こう!」
「はい…!」
菫は何が問題なのかは分からなかったが素直に返事をしてついて行った。