第2章 炎柱の屋敷
杏「そうだったのか!いつ頃の話だろうか!」
「よ、四年も前になります。」
杏寿郎は相変わらず笑みを浮かべながらも、もっと驚いた顔をした。
杏「よもや!それならば俺が隊士になったばかりの頃だな!今よりもっと未熟であった俺を恩人と言ってくれるとは有り難い話だ!!」
それを聞いた菫は頭巾の中で薄く口を開いたまま固まった。
何も言わず完全に止まってしまった菫を見て、杏寿郎は微笑んだまま少し首を傾げた。
「炎柱様…、恐れ多いのですが意見を口にしても宜しいでしょうか……。」
その言葉を聞くと杏寿郎はすぐに頷いた。
菫はそれと共に口を開く。
「炎柱様は未熟者ではございません。四年前からずっと自分の心を照らして下さいました。初めてお会いした時からそのお姿は頼もしく太陽のように輝いていましたし、どの仕草も全て尊く清く気高さを感じました。その剣筋もイッシュンデハアリマシタガウツクシクテオニヲワスレテホレボレトシテシマウホドデドレダケタンレンヲツンダノカソウゾウモデキズ…、」
菫の言葉はまだ続いていたが、杏寿郎は途中から笑い声を上げて炊事場を出るとそのまま歩き始めてしまった。
菫はそれを慌てて追う。
「申し訳ありません。喋り過ぎました。」
杏「いや、とても慕われているのだと知って嬉しく思っただけだ!謝ることは何も無い!!」
菫はそのさっぱりとした言葉と太陽のような笑顔にほっと肩の力を抜いた。
「ありがとうございます。」
その後、杏寿郎は屋敷内を一通り案内し、早速菫に茶を淹れてもらうと縁側に持って来させた。