第43章 対話
杏「…都合の良い日付けを訊くばかりで肝心の目的について書かれていないが…。」
「医者の家系である親戚の元を訪ね、その一族の研究を調べるように命じられたと話していました。」
菫がそうはきはきと答えると、杏寿郎は菫の頭を撫でて礼を言った。
杏「研究とは何か気になるが、手紙に書いていない事を考えると慎重に取り扱わねばならない情報なのだろう。」
杏寿郎はさっぱりとした声音でそう言い、菫に手紙を手渡す。
そこには『なるべく早い日付けだと助かる』という旨が書かれていた。
杏「まず君の家へ行くという選択肢もあるが君はどうしたい!俺は勿論それでも良いぞ!念願のご対面だろう!!」
杏寿郎はそう言って優しい笑顔を浮かべたが、菫は首を横に振った。
「家族とはゆっくり話したいので後にします。」
菫の決定に杏寿郎はただ頷いた。
杏「では傷が治ったらまずは名古屋だな!」
「はい!」
二人はそうして次の予定を決め、蝶屋敷に響く慌ただしい音を聞きながら色々な話をした。
主従関係を終え、そして敬愛の呪縛から解かれた今、二人の会話は重ねる度に少しずつ柔らかくなっていった。