第43章 対話
杏「君の話し方が少し変わったように思える!その調子で様付けを止めてみてはどうだろうか!」
杏寿郎がそう明るく提案すると菫はぎょっとして固まった。
「…そんな事をしたら、杏寿郎様の親衛隊の方々に命を狙われてしまいます。」
そんな団体があるとは到底信じられなかった杏寿郎は、はぐらかされたのかと思って困った様に微笑んだ。
杏「そんなに嫌だろうか。関係も変わったのだから、せめて俊彦さんと同じ様に呼んでもらいたいのだが。」
杏寿郎は名古屋の旅で、自身だけ二人から様付けされる事に少し抵抗を感じていたのだ。
「そんな…俊彦さんと同じ様になんて呼べません。私は…、」
菫は実のところ、良い人だと分かりつつも俊彦を得意としていなかった。
要らないと言っても贈り物を与えてくるし、わざと愛想の無い低い声を出してもめげずに追いかけてきたからだ。
「私は、杏寿郎様を…敬愛までいかなくても尊敬しているんです。言葉遣いは砕けたとしてもそこを変える事は出来ないわ。」
杏「…………………………。」
「…………………………。」
まさに今本当に砕けた言葉遣いに、杏寿郎はパッと明るい笑顔を浮かべ、菫はバッと口を両手で押さえた。
続いて言葉を訂正するように首をぶんぶんと横に振る。
杏寿郎はそんな事は気にせずに勢い良く上体を起こした。