第43章 対話
杏(………………………。)
口角が不自然にきゅっと上がる。
そして徐に立ち上がるとサイドテーブルを退かし、自身のベッドを押して菫のそれに近付け始めた。
「…え………、」
杏「うむ!!」
流石にくっつけはしなかったが、手を伸ばせば相手に届く距離にはなった。
「………………。」
菫は杏寿郎の傷の具合いを心配する気持ちと、目の前の状況に困惑する気持ちでいっぱいいっぱいになってしまった。
杏寿郎はそんな菫ににこっと明るく微笑む。
杏「これで君を撫でる事が出来る!!」
「あ……はい…。」
菫は杏寿郎の明るさと勢いに流されながら返事をした。
そんな菫を見た杏寿郎は面白そうに笑いながら布団に入り、しのぶの言い付け通り仰向けに横たわると菫に手招きをした。
杏「もっと此方へ来てくれないか。君を撫でたい。」
菫は優しい声に緊張を溶かすと、前に手をついて上体を軽く起こし、杏寿郎のベッドに近寄ってから恐る恐る体を横たえた。
杏寿郎は近寄ってきた菫を慈しむように見つめると片腕を伸ばし、優しく、礼を言うように頭を撫でた。