第43章 対話
菫も男装してまで杏寿郎の屋敷に潜り込んだ自身の行いを思い出し、居心地悪そうに目を伏せた。
そんな菫を見ながら杏寿郎は再び口を開く。
杏「…君は俺が二回とも傷を作って帰ったので勘違いしたかもしれないが、父上は積極的に暴力を振るう訳ではない。」
「…では……何故衝突を……?」
菫がそう恐る恐る訊いてみると、杏寿郎は受け入れるように眉尻を下げて微笑んだ。
杏「前回は父上の体を想って『酒をやめてくれ』と言おうとした。だが酒に頼らなければ生きていけない程に辛いのだろう。俺はそれを理解出来ていなかった。あとは鬼殺隊を辞める、辞めないの話が殆どだ。」
菫はそれを聞くと、確かに前に杏寿郎が言った通り『辛く当たるのは杏寿郎の身を案じているから』なのかもしれないと思った。
(でもやり方が正しいとは思えない…。)
「やはり早く鬼舞辻を斃さなければなりませんね。」
菫は視線を自身の握り拳に落としながら、『そうすれば万事解決出来ます。』と続けた。
杏寿郎は長年息子として兄として背負ってきた問題を、一緒に解決しようとしてくれる菫を頼もしく愛おしく思った。