第42章 恋仲
実「で、どうだった。」
杏「うむ。」
杏寿郎の纏う空気がピリつく。
菫はそれを感じながら口を噤み、柱の会話の邪魔をするまいと気配を消した。
杏「普通に戦っていれば間違いなく負けていた。下弦とは比べ物にならない。遊ばれた。」
杏寿郎の言葉に実弥は眉を寄せる。
実「普通じゃねぇ戦い方をしたのかァ。」
その言葉に杏寿郎はサイドテーブルに手を伸ばした。
菫は気が付かなかったが、そこには破けた御守りが置いてあったのだ。
杏「この御守りに人の増血剤が入っていた。それが鬼の体に害を及ぼしたようだ。と言っても狙って作れる状況ではない。これからは警戒もされるだろうし、他の上弦には使えないだろう。」
実弥は大した収穫を得られずに深く息を吐いた。
実「まァ、まぐれでも上弦を一体斬れたのは無駄じゃねェ。」
そう言うと立ち上がる。
杏「無駄足にさせてしまってすまない。」
杏寿郎がそう言いながら掛け布団を退かすと、立ち上がろうとしているのだと悟った実弥は白目を剥きながら杏寿郎の頭を持ってベッドに無理やり埋めた。
実「良いから寝てろォ!!」
実弥がそう言った時、しのぶが病室の戸を開けた。
し「…不死川さん。今日いっぱいは煉獄さんを休ませてあげるようにとお館様が仰られた筈です。何故こちらにいらっしゃるのでしょうか。」
杏「見舞いに来てくれただけなので大目に見てあげて欲しい!!証拠におはぎもある!!!」
杏寿郎は今さっき実弥がさり気なくサイドテーブルにおはぎを置いた事に気が付いていた。
すると実弥は居心地悪そうに眉を寄せる。
一方、しのぶはお見舞いの品を見ると少し眉を寄せながらも仕方無さそうに息を吐き、部屋に入って戸を閉めた。