第11章 薬草を届ける日
照「お姉様、また少ししか居られないのですか?」
照子は菫のテキパキとした手付きを見て不満そうな声を上げた。
菫は薬草を風呂敷に包み終わると照子と向き合う。
「すみません。今は特別急いでいるのです。明日の朝、私用で参りますので待っていて下さい。」
そう言って頭を下げると照子の後ろに居た両親が照子を嗜めて頭を下げた。
進「菫さんが朝にいらっしゃる時、わざと少なく買っていかれているのは分かっています。」
多「照子、あなたが会いたいと強請るから菫さんは出来る限り時間を割いて何度も店にいらして下さっているのよ。」
照「え……。」
照子の目が少し潤んだ時、菫は再び無情に戸を開いた。
「では失礼致します。」
照「あっ」
両親は頭を下げたが、気持ちが追いつかなかった照子は無言で見送ってしまったのだった。
(杉本様はいらっしゃるのかしら。圭太さんと連絡が取れれば良いのに…。)
そんな事をちらりと思ったが、菫はすぐに雑念を振り払って歩を進めた。
圭「菫!…早くこっちへ来い…!」
蝶屋敷に入ってすぐ、菫が来る日を知らない筈の圭太が腕を掴んで引っ張った。