第11章 薬草を届ける日
杏「君は相変わらずだな!二週間も経つのだからそろそろ慣れても良さそうなものだが!!」
そう、菫が杏寿郎の屋敷に来て二週間が経っていた。
つまり今夜は蝶屋敷へ薬草を届けなければならない。
「ご容赦下さい。」
杏寿郎はそう断られても、菫が距離を置きたがっているのではなく、只々慕ってくれているのだと実感していた為に特に気にする事なく笑った。
杏「では、行ってくる!!」
「お気を付けて行ってらっしゃいませ。ご武運を。」
菫がいつもと同じ台詞を言うと、杏寿郎は満足そうに口角をきゅっと上げてから走り出した。
杏寿郎が出発したのは日暮れより二時間程前だ。
聞き込みが可能である場合はもっと早く出る時もある。
菫は帰る頃には日が沈んでしまっているかもしれないと思いながら着物に着替えた。
菫が着物に着替える理由は二つある。
一つ目は、隠の隊服で男装をしたまま蝶屋敷へ行く訳にいかないから。
二つ目は、男装していない隠の姿を万が一杏寿郎に見られれば、全てが露呈してしまいそうだったからだ。
(炎柱様に見つかる事は無いと思うけれど…。)
菫は鏡の前で袷を整えると風呂敷を手に屋敷を出た。