第11章 薬草を届ける日
「圭太さん…どうしたのですか。」
そう問われると圭太は周りを見渡しながら階段下に隠れてしゃがみ込んだ。
菫もそれに続く。
圭「ここの所ずっと杉本様がいらしてるんだ。お前を探している。」
「お怪我をなさっているの?」
圭太は驚いたように問い掛ける菫の頬を抓る。
圭「怪我をしていないのにいらしているんだよ。とても機嫌が悪い。薬草なら俺が蟲柱様に渡しておくから菫は早く此処を出るんだ。いいな?」
菫は圭太の優しさに表情を和らげ、頬を摘まれながら頷いた。
圭太に見送られ、勝手口から外へ出る。
広い屋敷とはいえ門まではそう遠くない。
菫はいつも通りスタスタと歩く。
そして門から出ようとした時だった。
「…ッ」
強い力で腕を掴まれた菫は顔を歪ませながら息を切らしている杉本を見上げた。
「お疲れ様です、杉本様。」
動じない菫を見て杉本は更に顔を歪めた。
杉「挨拶が遅いだろ。」
そう言うと菫の腕を掴んだまま屋敷へと戻り、無人で玄関から一番近い病室へ入った。