第40章 無限列車―其の弐
(…杏寿郎様はこんなのよりもっと酷いお怪我をされている…!鬼もいつ回復するか分からない…!!今深追いするのは得策ではない!!)
そう思ってまだ遠くに居る杏寿郎に向かって声を上げようとした時、伊之助が杏寿郎の援護なしに猗窩座へ近付き過ぎた。
猗(こいつだけでも…ッ)
伊(……や、ヤバ…踏み込みすぎた…!)
猗窩座の拳が伊之助の頭に伸びる。
杏寿郎は当然それを防ぐように動いたし、実際、問題無く攻撃を弾くことは可能だった。
しかし、判断能力が低下していた菫は伊之助を庇うように猗窩座と伊之助の間に滑り込んでしまったのだ。
杏「菫ッ!!!」
杏寿郎は目を見開いて菫を退かせようとしたが、それよりも早く猗窩座の拳が空中で止まった。
あまりにも意外だった行動に目を丸くしながらも、杏寿郎は素早く菫を自身の後ろへ引っ張った。
猗「…………………………………。」
猗窩座は吐血している菫の姿に呆然としていた。
何かを思い出したのか、その眉尻は打ちのめされた様に垂れ下がっている。