第40章 無限列車―其の弐
菫には剣の才が無かった。
そもそも運動神経は良くなかったし、力も弱かった。
結局、ようやく使えるようになった呼吸で体を強化しても、並の男より少しだけ強い力が出せる程度にしかなっていない。
しかし、我慢強い彼女は鍛錬にひたむきであった。
それ故に付けることが出来た唯一の力がある。
それは "速さ" だった。
俊「菫さんッ!!それは駄目だ!!!」
(止めないと…!)
菫は俊彦の想いを置いてきぼりに、杏寿郎達を追って林の中へ入ってしまった。
走っていると刀の音が近付いてくる。
見ると明らかに動きが鈍くなった猗窩座相手に杏寿郎と伊之助が共闘していた。
伊「見えるぜ、見えるぜ!お前の動き!!」
猗「調子に乗るなよ、弱者が…!!」
伊之助は上弦の鬼を挑発してしまっている。
それによって猗窩座は怒り、彼が "空式" と呼ぶ目に見えない衝撃の攻撃をやけくそのように数多く放った。
「…ッ」
その一つが腹を掠り、胃を痛めた菫は吐血した。