第40章 無限列車―其の弐
菫は杏寿郎への侮辱を聞くとカッと頭に血が上って思わず立ち上がった。
杏「出てくるなと言った筈だ!!!」
「杏寿郎様が毒など使う筈がないでしょう!!!」
猗窩座が手から顔を上げて菫を睨む。
杏寿郎はその光景を見て全身が粟立つ感覚を覚えた。
杏「鬼の君に害のある物を持っているという自覚は無かったッ!!恐らく君の体に害を及ぼしたのは人の増血剤だ!!御守りに入れてあった!!!」
そう大きな声を出すと猗窩座は視線を杏寿郎に戻した。
納得はしたようであったが、依然息は荒く、顔にはいくつもの青筋が浮かんでいる。
杏「すまないが、弱っていても鬼に掛ける情けは持ち合わせていない。」
杏寿郎はそう言うと再び猗窩座に斬りかかった。
猗窩座は逃げるように跳躍して杏寿郎から距離を取る。
その動きは明らかに乱れていた。
猗(増血剤…!?何だ、体を上手く動かせない…ッ!!)
その時、猗窩座の脳内にある声が響いた。
―――『退避せよ。』
猗窩座は目を見開いた。
それは自身を此処へ向かうよう指示した鬼の始祖の声だった。