第39章 無限列車―其の壱
「……本当に行かないわ。一度は確かに付いて行きたいと思ったけれど、蓮華を置いて家を出るだなんて…どうかしているもの。あの時はきっと舞い上がっていたんだわ。」
蓮「…ふーーーん。」
蓮華はつまらなさそうな声を上げた。
菫はそう言って確かに想いを断ち切った…筈だった。
それでもなかなか杏寿郎を忘れられず、ぼんやりとする事が増えた菫は、ある日の晩に少しでも杏寿郎を感じたくて暗い中家を抜け出した。
(また、いらっしゃらないかしら…。遠くから一目でも見れたら……。)
―――くちゃ
菫の息が止まる。
路地裏で何かが動いていた。
そして、むせ返るような血の匂いがする。
「お、に……。」
菫がそう呟くと、 "それ" は咀嚼を止めた。
魘「あれぇ?君、鬼を知っているの?鬼狩りには見えないけど。」
そう言って笑う魘夢の口周りは血で濡れていた。
魘「そうだよ、俺は鬼だ。名前は魘夢。好きな事は人の…、」
菫の呼吸が速くなる。
(逃げなきゃ…逃げなきゃ、逃げなきゃ!!)
強張る足を動かして後退りをすると魘夢は菫を眠らせ、菫はその場に崩れ落ちてしまった。