第39章 無限列車―其の壱
魘「暇だから苦労話をしたいだけだよ。どうせ君に俺の首は斬れない。そもそも此処は夢の中。斬っても斬っても俺は再生する。」
菫は周りを見渡し、確かに其処が実家である事を確認すると、非現実的である事を認めた。
「…苦労話?」
魘「うん、君は知らないからね。俺はネタばらしをしたくて仕方無かったのに君は本当に鬼殺隊に入るし、家族の方には鬼狩りが張り付いてしまうし腹が立ったよ。」
菫はそれを聞いて目を見開いた。
(鬼狩り様が張り付いていた…?警察のお父様が居るのに何故刀を持つ鬼殺隊が危険を侵して私の家に…。)
魘「君はなぁんにも知らないんだね。君が捨てた許婚、彼の家で世話になった鬼狩りは君が家を捨ててから暫くの間、特別に依頼を受けて君の家を警護していたんだよ。俺を警戒してね。」
「俊彦さんの家で世話に…?何が…どういうこと……。」
魘「君は頭が悪いなぁ。彼の家は大きな藤の花の家だった。そして君の父親に近付いた。警察の重鎮を取り込めれば鬼殺隊は動き易くなる。君との結婚は鬼殺隊の為だったんだろう。」
菫の瞳が揺れる。
魘「そして君が家を出た日の晩、家を捨てるより少し前に眠る君を道端で保護したのも彼の家の鬼狩りだ。彼は君の失踪を鬼の仕業だと怪しんで、その日から君の家を厳重に守るようになった。つまり、彼は最初から大方の事を知っていたんだよ。」
(立花家は藤の花の家紋の家だった…?私の心配をして、家族も…ずっと守って下さっていた……?)
菫は顔を青くし、今にも刀を取り落としそうだった。