第39章 無限列車―其の壱
蓮華は驚いて目を丸くしている。
「許す筈がない…許される筈がない……!そもそも……、」
菫はハッとして固まった。
頬に汗が伝う。
(……そう、許される筈がない。だから並々ならぬ覚悟で杏寿郎様を追い掛けた、はず。だけど、)
菫は目の前で首を傾げて心配そうな顔をしている蓮華を見つめた。
―――『この子に責任を押し付ける事は、そもそも私に可能だったのだろうか。』
そう、今更になって自身の行動に疑問と違和感を抱いた。
「……私はあなたの事をとても大事に思っているわ。一人残していけない。私は身勝手な恋に身を焦がさない。自身を律していられる自信がある。そして、あなたはそんな事を言わない。」
そう伝えると蓮華が歪んだ笑顔を浮かべて姿を男へと変え始めた。
菫は目を見開いて距離を取る。
(この夢はおかしい…!只の悪夢とは何かが違う……!!)
男「そうだよ。よく気が付いたね。」
そうねっとりと言って笑う男の肌は不自然に白く、目には壱という数字が刻まれていた。
菫はその男を見て口を開けて固まった。