第39章 無限列車―其の壱
読書の時間、上の空の菫に蓮華がひそひそと話し掛ける。
蓮「お姉様、恋をなされたのですか?」
「……恋?」
菫は驚いて蓮華を見つめ返した。
蓮華は楽しそうに頷く。
蓮「皆話していますわ。最近のお姉様は恋に落ちたようだと。何をしても上の空で、まるで誰かを想っているよう、らしいですわ。」
「………………。」
確かに何時も杏寿郎の事を思い出していた菫は頬が熱を持ったのを感じた。
(…私、まさか……、)
蓮「恋なのですね!?」
菫は慌てて蓮華の口を塞ぐ。
「違うに決まっているでしょう…!大体私には俊彦さんが、」
蓮「それなら私が代わりにお嫁にいって差し上げますわ。」
「…え………、」
蓮「前々から俊彦さんをお慕いしておりましたの。きっと街でも仲睦まじいと噂になります。実際、今も流れているでしょう?」
(…………違う……。)
蓮「ですのでお姉様は獅子様を追い掛けて下さいませ。きっと誰もが許しますわ。いえ、皆お祝いするに違いありません!」
「そんな筈ないでしょう…!!」
菫は気が付いたら涙を溢していた。