第39章 無限列車―其の壱
杏「それでは俺はこれで失礼する!」
「あっ」
杏寿郎が地を蹴ろうと足を開く。
杏「では片倉姉!片倉妹を連れて早く家へ帰るように!」
「お待ち下さいませ!!」
菫がそう声を掛けると、杏寿郎は踏み止まって菫を振り返った。
「…………え、」
杏「どうした。名を伝えるのだろう。」
菫はそう言い当てられると目を見開きながら頷いた。
「わ、私は清水菫と申します。この子は妹の蓮華です……。」
杏「そうか!菫だな!きちんと覚えておく!!」
杏寿郎は呆然としている菫に歩み寄ると、ぽんぽんと頭を撫でてから走り去って行った。
(………。)
菫ははしゃぐ妹を優しく抱きかかえると一度きつく抱きしめ、ぼんやりとしながら家へと向かった。
―――
「……はぁ。」
杏寿郎と出会ってから菫の溜息が増えた。