第10章 二日目の日常
「驚かせてしまい、申し訳ございません。訳あって男性の振りをしております。手前勝手な頼みですが、出来ればこの格好をしている間は男性として接してくださいますよう、宜しくお願い致します。」
進一はその声と深々と頭を下げる様子を見て、漸く目の前の怪しげな格好をした男と思われる人物が菫である事を認めた。
照「訳とは何なのですか?とても興味が湧くわ!」
照子はあっさりと受け入れ、今は好奇心旺盛に目を輝かせている。
菫は再び目元を緩ませる。
「私の最大の秘密でございます。知れば如何なるか分かりませんよ。」
菫が茶目っ気のある事を言うと、照子は益々嬉しそうな表情を作った。
言葉遣いこそ堅いものの、菫は本当に言われた通り照子を妹の様に思って接していたのだ。
照「まあ!お姉様、秘密とは魅惑の言葉ですわ!」
そうして戯れていると、微笑ましそうにしている進一の隣に旦那の膳を片付けていた多恵が寄って来る。
多「あら、菫さん…如何してその様な格好を…?」
進一は多恵が目の前の妙な格好の人物を呆気無く菫だと見抜いと事に脱帽した。
照「それは秘密なのだそうです!」
「申し訳ありません。」
菫は進一と多恵に向かって深々と頭を下げる。