第10章 二日目の日常
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翌朝、菫はまだ薄暗いほど早い時間に起きた。
着替えてから顔を洗っていると庭の方から音が聞こえてくる。
菫が庭に向かうと、其処には木刀を振るっている杏寿郎が居た。
視線が合い、頭を下げる。
「お早うございます。」
杏「随分と早いのだな!おはよう!」
汗を流して太陽のような笑みを浮かべる杏寿郎は、今起きたばっかりだという菫に対してそんな事を言う。
つまり、彼は寝ていないのだ。
夜に任務を遂行する鬼殺隊士が生活のリズムを崩さない為に任務のない夜も起きているのはよくある話だ。
菫も一日前まではそうであったが、朝早くにしか買えない物や、日が高く昇っている間しか開いていない店がある。
(まずは不十分だった炊事場の掃除をして、沢山お食べになる炎柱様がいつでも食べられるように少なめの…五人分の食事を用意しよう。)
菫はそう思うと『失礼致します。』と言って再び頭を下げてから炊事場へ向かった。
杏「うまい!わっしょい!!…わっしょい!!」
「…………………………。」
菫は杏寿郎の好物を知ってから、必ず芋を入れた食事を提供していた。
それ故に杏寿郎は毎度『わっしょい』を口にしていた。