第32章 五年前の真実
清水家を出た杏寿郎は記憶を辿ってその街の藤の花の家紋の家を探した。
今はもう日が傾いている。
鬼殺隊士が動き始める時間だ。
そして、その目印はすぐに見つかった。
杏(隊士が出て来た。あの屋敷が…、)
見れば確かに覚えのある屋敷だった。
杏寿郎が見つめる先で隊士を見送る為か若い男が外に出てきた。
杏寿郎はその男が菫の元許婚なのだと直感した。
杏「……。」
杏寿郎が速度を緩めて近付くと、隊士達が驚いた顔をしながら頭を下げた。
杏「気を遣わないでくれ!」
笑顔を浮かべながら朗らかな声を出す。
すると隊士達は『炎柱様は噂通りの人なのだ。』と嬉しそうにした。
杏「今晩は。」
菫の元許婚であり、蓮華の夫となる男、俊彦は柔らかな雰囲気を持つ男だった。
そして、俊彦の物言いたげな瞳は杏寿郎が炎柱である事の他にも何かを知っているようであった。
俊「今晩は、炎柱様。お初にお目にかかります。この家、立花家の俊彦と申します。」
俊彦は見た目同様、柔らかな声を出した。