第9章 早い帰り
多「あっ!菫さん、それはいけません!」
進「照子、お返ししなさい!」
照「えっ、えっ、」
三人がてんやわんやとしているうちに菫は玄関へスタスタと歩いていった。
杏寿郎が帰ってくる前に屋敷へ戻らなければならないからだ。
玄関の戸に手を掛けるとすらりと開いて中に向き直る。
「ではまた来ます。」
菫は引き留めようとする三人にパッと頭を下げると無情に戸を閉めた。
(急がなくちゃ…。)
杏寿郎は宣言通り、菫と会話をしてから一時間後に屋敷へ帰ってきた。
菫はきちんと重ね着をしてから隊服を身に着け、炊事場を掃除し、風呂の湯を沸かし、更に夕餉を作り始めていた。
杏「丁度良い時間に作ってくれたようだな!この時間に帰るのは珍しいというのに!」
菫は例に漏れず頭を下げた。