第9章 早い帰り
「…お待ち下さいませ!」
咄嗟に制する言葉を掛けた。
そして未だ笑みを絶やさずに腕を組んで様子を窺っている杏寿郎をこわごわと見つめ返した。
「有り難いお話ですが一人で十分でございます。」
杏「そう思っている事自体、大変危険だ!」
「闇夜が危険な事は承知しております。」
杏「貴女が知らない危険もある!このまま何もせず家に帰れば気掛かりだ、送らせてくれ!」
「………こ、婚約者がもうすぐ来るのです。男性と居るところを見られたくありません。」
食い下がられ続けた菫はそんな言い訳を使った。
すると杏寿郎は組んでいた腕をパッと解いた。
杏「そうか!それなら安心だな!だが、先程言った貴女の知らない危険もあるのは事実だ。合流し次第すぐに家へ帰って頂きたい!」
「はい…分かりました……。」
菫は敬愛する杏寿郎に嘘を吐いてしまった事に呆然としながら返事をした。
その可怪しな様子を見た杏寿郎は目を細めた。
杏「…では!俺は君のような人が居ないか見廻ってくるので失礼する!」
「あっ…あの、貴方はいつ頃お家へお帰りになられるのでしょうか…?」
そんな質問をされると杏寿郎は笑みを浮かべたまま目を大きく開いて少しだけきょとんとした。