第9章 早い帰り
夕日が沈んで少し経った頃、菫は漸く照子の家、もとい、藤井家の家や、杏寿郎の屋敷がある街に着いた。
スタスタと歩いていると視線を感じて振り返る。
すると赤く光る目と視線が合った。
「えんッ、」
そこまで言って菫は口を噤んだ。
(どうしよう…まさかこんなに早くお帰りになられるなんて…!)
一方、珍しい赤い瞳の持ち主である杏寿郎は慣れた反応であった為、動じず笑みを浮かべていた。
杏「今晩は!」
杏寿郎が爽やかに声を掛ける。
菫は風呂敷をぎゅっと抱き締めながら頭を下げた。
「今晩は…。」
杏寿郎はきちんと返ってきた挨拶を聞くと、菫に向かって歩を進めた。
すると菫は思わず後退る。
杏「すまない!驚かせてしまったか!安心してくれ、日も暮れたので家まで見送ろうと思っただけだ!!女性一人では危ないのでな!」
菫はその優しい心遣いに改めて杏寿郎を尊敬したが、素の姿でどう接したら良いのか分からなかった。