第8章 可愛がること
杉「出せって。」
杉本はそれが気に入らない。
菫の声を気に入っているからこそ気に入らない。
菫の事が純粋に嫌いだという訳ではなく、意思の強い菫をただ自身に屈服させたいだけなのだ。
黙り込んで息を整えている菫の腹に蹴りを入れる。
すると菫はまた無言でそれを受け入れた。
杉「ちッ……、気分が萎えた。」
結局その日も菫は折れず、日が暮れる直前になってその行為は終わりを告げた。
菫は相変わらず退室の際に深々と頭を下げ、杉本は再び舌打ちをした。
(炊事場を掃除して、お風呂を何時でも入れるようにして…、そうだ、照子さんのお家にも行かなくちゃ…。)
そう思うと着物の崩れを手早く直し、何事も無かったかの様な顔をして蝶屋敷を発った。