第29章 煉獄様の誕生祝い
「…だ、駄目です、煉獄様…煉獄様…!」
菫の焦った声を聞いて杏寿郎は慌てて体を離した。
杏「すまない!やり過ぎた!!」
杏寿郎の纏う空気が一気にいつもの "煉獄杏寿郎" の空気へと戻る。
菫はその尊く清らかな杏寿郎の空気に触れると、詰めていた息を吐いた。
(……助かった………。)
結局、杏寿郎はその後菫の頭にも触れずに出発した。
ただ、出発する際の挨拶はいつもの倍の声量であった。
菫はあっと言う間に去って行ってしまった杏寿郎の背中に慌てて頭を下げ、屋敷に入ると早速御守りを作り始めた。
「煉獄様をお守り下さい。」
針を入れる度にそう願い、日が落ちて手元が暗くなっても続けた。
そうして満足のいく御守りが仕上がった次の日、杏寿郎の誕生日がやってきた。