第29章 煉獄様の誕生祝い
杏「…………。」
目を細めた杏寿郎は、胸を焦がす熱い感情を抱きながら菫の髪に口付けを落とした。
「……?」
菫が頭に違和感を感じて顔を上げようとすると、それを制するように腕に力を込める。
そして、口付けをした所に頬擦りをした。
「…っ」
菫はそうされてやっと自分が目の前の青年に何をされているのかを察した。
「れ、煉獄様…。」
杏寿郎は菫の動揺した声を聞いて心が満たされるのを感じた。
杏「どうした。抱き締めても良いのだろう。」
「それは…、」
杏寿郎の力強い鼓動が随分と速くなっている。
菫はその音につられるように自身の胸も苦しくなるのを感じた。
「…………煉獄様…。」
十八歳の杏寿郎の身長はラストスパートと言わんばかりにじわじわと伸びていた。
菫は抱き締められながら杏寿郎の身長が初めて会った時よりも何センチも高くなっている事に気が付いた。
それと同時に敬愛する青年が大人の男になっていっているのだと気付かされた。