第29章 煉獄様の誕生祝い
「蛙と藤の花の刺繍も入れたいわ。願掛けとして。それからやっぱりお薬も。」
圭「ああ、お前らしくて良いんじゃないか?炎柱様も好ましく思われるだろう。」
そう言われると菫は僅かに微笑んだ。
「傷薬はもうお渡ししているし…。そうだ、鉄剤も良いかも知れない…。」
圭「鉄剤?鉄なんか使うのか?」
「新しい書物に書かれていたの。鉄は増血剤になるそうです。お役に立てるかしら…。」
そう言いながら菫は目を細めた。
その時の菫の目が恋をしている乙女の目に見えたので、圭太は少しもどかしく思った。
圭(…いや、焦らせたら駄目だ。炎柱様、頑張って下さい…。)
―――
贈り物を決める事が出来た菫は無事に杏寿郎の屋敷へ帰り、夜食を作って杏寿郎を待った。
(今日は…手を退かさないように…。傷付けないように…。)
そう思いながら胸に手を当てて心臓を落ち着かせていると、とうとう玄関の戸が開く音がした。