第29章 煉獄様の誕生祝い
圭太は湯気を出してしまいそうな菫の頭を優しく撫でる。
圭「何も揶揄っていないぞ。ただどうしているのかと気になっただけだ。」
柔らかく穏やかに言われると、菫は肩の力を抜いた。
「それが、毎日握られているんです。…慣れる為、だと。」
圭「慣れる?」
そう聞き返されると困ったように頷く。
「そうなの。『一緒に住んでいれば予期せず体に触れてしまう可能性があるだろう!そうすれば女性に慣れていない俺の心臓は止まってしまうかもしれない!』と仰られて…。」
圭太は無理矢理な杏寿郎の言い訳に笑いそうになってしまった。
なんとか堪えてうんうんと頷く。
圭「それは確かに大問題だ。欠かせないな。」
「そう…でしょうか…。」
圭「毎日三十分握っているのか?」
そう冗談交じりに訊いてみる。
すると菫は視線を落としながら首を横に振った。
「最初は三十分だったのだけれど、段々延びて今は一時間になりました。」
流石に三十分という長い時間は最初だけだろうと思っていた圭太は目を丸くした。
圭「………まさか、無言で…?」
その問いに菫はこくりと頷いた。
確かにスキンシップを取るようにと助言したが、思っていたのと異なる。
圭太はそれでも菫が赤くなるのなら正解なのだろうと思った。