第29章 煉獄様の誕生祝い
「駄目なんです。そういう意味の "慕う" ではないんです。」
圭太はしおらしくなってしまった珍しい菫を見ると、体の力を抜いてから深い溜息をついた。
圭(菫が何でこれ程までに頑ななのかは分からないけど、今までは想いを告げてきた男と距離を取っていた。元の関係に戻りたいと言われても、だ。その点を考えれば炎柱様はやはり特別なんだろう。)
そう思いながら菫の頭を優しく撫でる。
すると菫は少し驚いた顔をして首を傾げた。
圭「……しつこく言ってごめんな。ただ、炎柱様の事は決め付けず、ゆっくりと知っていって欲しい。あの方の光は必ずお前を明るい方へ導いてくれる。」
圭太の温かい手が頭から滑って頬を撫でる。
圭太は目を細め、眉尻を下げて微笑み、妹を想う兄の顔をしていた。
「………はい…。」
そうして場が落ち着くと、菫は杏寿郎との間で起きた出来事を一通り圭太に話した。
圭太は手を握ったまま三十分も二人して固まってしまったという話を聞いて可笑しそうに笑った。
「笑い事じゃないわ。どうしたら良いのか分からないし、煉獄様も何もお話しされなくなってしまうし…顔から火が出るかと…。」
そう話す菫は今も頬を染めていた。
そんな顔を初めて見た圭太は驚いた顔をしてから嬉しそうに微笑んだ。
圭(…ああ、なんだ。順調じゃないか。)
圭「そうか。笑って悪かった。それ以降は握られていないのか。」
菫は更に顔を赤くさせた。