第7章 蟲柱、胡蝶しのぶ
「失礼致します。」
菫は本が沢山ある部屋の中へ入ると風呂敷を開き、しのぶが指し示した机の上に薬草をテキパキと並べていった。
「お求めになられた物は全てあの店で揃いました。品質も状態も良好です。」
し「ええ、信頼を置いている店ですので。清水さんが代わりに買ってきてくれてとても助かりました。それにしても…流石にこれはおかしいですね。きちんとした額を受け取って貰って下さい。」
その言葉に菫は『畏まりました。』と頭を下げた。
藤の花の家紋の家が鬼殺隊に無償で尽くす事は珍しくなかったが、それでもしのぶは相応の金額を支払う事を選んだのだ。
(相変わらず蟲柱様もご立派な方だわ。お若いのに…。)
菫はしのぶから適切な金と一筆を貰うとそれを懐に仕舞い込んだ。
し「では無くなりそうになったら鴉を飛ばします。恐らく月に二回、といったところでしょうか…。煉獄さんのお屋敷に居るんですよね?」
「はい。そうで御座います。」
相変わらず仰々しく頭を下げる菫を見たしのぶは、歩み寄ると頭を上げさせた。
し「分かりました。その様に何度も頭を下げなくて良いんですよ。清水さんは私より歳上でしょう。」
そう言われると菫は初めて無表情を崩し、困った様な表情を作った。
それを見てしのぶはぽんと手を合わせる。
し「まあ。清水さんもそんな顔を出来るんですね。安心しました。」
「……お気を遣わせてしまい、大変申し訳ございませんでした。」
し「うーん、これは手強そうですね。」
しのぶは残念そうに微笑むと頭を下げてから退室する菫を見送った。