第26章 逃避
―――
天「はぁ。質の悪い鬼だったな。」
杏「うむ!では!俺はこれで失礼する!!」
杏寿郎が鬼を斬って早々そんな事を言った為、天元は走り出そうとする杏寿郎の首根っこを捕まえた。
杏「……何か用だろうか。俺は急いで帰らなければならないのだが。」
天「お前がお館様に鴉を飛ばせ。飛ばしたら反省会だ。」
杏「分かった!要、来てくれ!」
杏寿郎は少し離れた木の上に居る要を呼び、下弦の弐を倒した旨を伝えるよう頼むと豆を与えた。
杏「それでは頼む!」
杏寿郎は要が見えなくなるまで見送ると、しゃがみ込んで鼠と話している天元を振り返った。
杏「…………。」
天「…あ?終わったのか。声掛けろよな。」
杏「君、鼠と話せるのか。」
そう言うと片膝ついてしゃがむ。
その鼠は妙に筋肉質で天元と揃いの額当てをしていた。
杏「……個性的な鼠だな!!」
天「おうおう、派手だろ!こいつは俺の忍獣だぜ。力も強ければ頭も良い。特別な訓練をさせているからな。」
杏「忍獣…君、もしかして、もしかすると忍なのか!!」
杏寿郎の瞳は輝いていた。
その少年の瞳を見た天元はにかっと笑い、杏寿郎の頭を撫でた。