第26章 逃避
杏「此処だな。」
天「ああ。人の気配も此処からだぜ。」
杏寿郎は目を見開く。
杏「では陽がある今のうちに救助をしなくては!急ごう!!」
天「お前は後ろだっつの!!」
制する言葉に、杏寿郎は『むぅ。』と言ってから天元の後ろについた。
―――ガタッ
立て付けの悪い戸を開ける。
すると、窓に板が打ち付けられていて室内は真っ暗闇だった。
天「…煉獄、外から西側の窓の板をなるべく多く割っておいてくれ。」
杏「分かった!」
杏寿郎がすぐに回り込んで肘で板を割ると、天元は西の部屋の襖を開いて屋敷内に西陽を取り込む。
杏「どうだ!生存者は居たか!」
入り口に戻って中を覗くと、無表情の天元が迷いの無い足取りで奥へと進んでいた。
杏「……。」
見れば西陽も当たらない壁に巨大な植物の蔓のような物がクナイで縫い止められている。
杏「クナイ、か?君がやったのか。」
天「他に誰がいんだよ。…見ろ。」
その言葉を聞いて杏寿郎も奥へ進み、天元が見つめる先に視線を遣った。