第26章 逃避
天「そこまで遠くねぇ。日が沈む前には着けるな。」
杏「うむ!だが生存者がいる可能性がある!なるべく急ごう!!」
天「……ああ。」
天元はその可能性の低さから、隊士の救助も任務の一つである事を失念していた。
というより、最近の一般隊士の脆さをよく知っていたのだ。
天(まあ、それを分かったところで煉獄は諦めねぇんだろうな。)
そう思うと無茶な速さで急いでいる杏寿郎を見つめた。
杏「この森か。確かに嫌な気配がする。」
天「ああ、気色悪いな。」
そう言うと天元はおもむろに地面に耳をつける。
杏寿郎は腕を組んで首を傾げながらもその様子を大人しく見守った。
天「…流石にぼんやりとしか分からねぇが、森の方から人のような音が複数聞こえた。どれか一つは鬼だろうが、複数って事は動いてる人間が少しはいるって事だ。」
杏「そうか!君の耳はすごいな!!」
天元は『まあな。』と言うと森の中へ足を踏み入れた。
天「お館様にも言われた通り、お前はあくまでも後方支援だ。今回大事なのはお前が先輩柱である俺の戦い方を見ること、そして連携の基礎を今一度学ぶことだ。」
杏「ああ!最近は合同任務の際に一人で片を付けようとしがちであったからな!!良い機会だ!右腕の反省と共に学ばせて頂く!!」
二人はそう確認を済ませると、死んだ隊士の鴉が教えてくれた森の中の屋敷へと向かった。