第26章 逃避
天「そういえば、きちんと答えなかったな。さっきは清水と何してたのよ。」
にまにまと笑いながらそう問うと、杏寿郎はきゅっと口角だけを上げた。
杏「黙秘するッ!!!!」
天「あ…っ、これ鼓膜やったかも…。」
天元は慌てて耳から血が出ていないかを確認し、この話題はもう出さないと心の中で誓ったのだった。
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天「さて、どんな話かねー。」
耀哉の屋敷が見えると天元は足を緩め、歩きながら門へ向かった。
杏「俺達が本当に合同任務を行うのなら隊士にもかなりの犠牲が出ているのだろう。気を引き締めなければな。」
杏寿郎も歩いて天元の後を追い、出迎えに来た少女について門の中へと入った。
耀「よく来てくれたね。」
二人を縁側に面した部屋へ招き入れた耀哉は、庭から目を離すと微笑みを浮かべながらゆっくりと振り返った。
杏寿郎と天元は同時にパッと頭を下げる。
耀哉はそんな二人に再び微笑んでから顔を上げさせ、今回の任務についての説明を始めた。
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耀「ではよろしく頼むよ。」
杏「はい!お任せ下さい!!」
天「承知致しました。」
二人は再び頭を下げ、日暮れに間に合うように急いで屋敷を出た。