第25章 大きな一歩
「…煉獄様……、その、」
心配そうな珍しい菫の声色に杏寿郎は廊下を振り返った。
そして菫が先程とは打って変わって青くなっているのを見ると、歩み寄って頭を優しく撫でる。
杏「大丈夫だ!!お館様は全てを見通していらっしゃる!怪我の事もご存知の筈だ!それに宇髄がいる!君は腹ぺこで帰ってくる俺の為に美味い物を沢山作っていてくれ!!」
「…はい!」
菫はしっかりと返事をするといつもの凛とした表情に戻った。
一方、天元は眉を寄せて後ろから杏寿郎の顔を覗き込む。
天「え、なにお前怪我してんの?」
その顔には明らかに面倒臭そうな表情が浮かんでいた。
杏寿郎は腕を組むと笑顔を浮かべながら天元を見上げる。
杏「一週間程前に利き腕をザックリやった!!」
天「明るく言うんじゃねぇよ!!」
杏「それより急ごうッ!!!」
天「あ、ちょ、」
杏寿郎がそう言ってさっさと外へ出てしまった為、菫は慌てて居間にあった炎柱の羽織りを持って後を追った。
杏「ありがとう。」
礼を言う杏寿郎の声音は柔らかい。
「お気を付けて行ってらっしゃいませ。ご武運を。…お早いお帰りをお待ちしております。」
杏寿郎はいつもとは違う言葉に目を丸くし、明るく笑った。
杏「うむ!良い子にして待っていてくれ!!」
菫は門前までついてくると深々と頭を下げる。
杏寿郎はその頭に再び手を伸ばして優しく撫でた。