第25章 大きな一歩
(…どうされたのだろう。)
そう思った時、緊張した面持ちの杏寿郎が更に膝を進める。
そして、汗ばんだ右手で菫の太腿の上にあった左手を握った。
「…え……、」
その手を見つめた菫は首を傾げ、杏寿郎の顔を見ようと視線を上げる。
「………。」
杏寿郎は菫の瞳をしっかりと見つめ、眉を寄せながら赤面していた。
(……………そんな…、)
杏寿郎がどういった気持ちで自身の手を取ったのかを理解した菫は、頬がかっと熱くなるのを感じた。
杏寿郎が気持ちを伝えるように握る手にぎゅっと力を込める。
菫はそれを握り返せず、振り払う事も出来ずに狼狽えた。
一方的に手を握られた事なら過去にもある。
しかし、その時は心がこんなにも乱れなかったのだ。
(どうしたら…、)
杏「清水。」
ハッとしていつの間にか落ちていた視線を上げる。
すると赤い瞳に捕まった。
杏「嫌だろうか。」
「え…、」
菫はごくりと喉を鳴らした。
動揺で瞳が揺れる。
杏寿郎は初めて見る菫の赤く染まった頬を見て胸を高鳴らせた。
何ともない顔をされると思っていたのだ。
杏「焦らせる気は無い。今はただ側に居てくれ。」
まだ戸惑いつつ、菫はその言葉に小さく頷いた。
すると再び杏寿郎の大きな掌が菫の手をぎゅっと握り直した。