第6章 杉本という男
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蝶屋敷に着いた菫は慣れたように裏へと回り、勝手口から屋敷内へ入った。
そしてしのぶを探している時、菫の後ろにとある隊士が立った。
男「清水、何してんだよ。」
菫の体は一気に冷えた。
しかしすぐにパッと頭を下げて挨拶をし、更に堂々と視線を合わせると、その男は癇に障ったように眉を寄せた。
男「仕事ほっぽりだして炎柱の元に行ったんだって?それで支給された隊服も着ずにめかし込んでるのか。」
「めかし込んでなど、」
男「めかし込んでるだろうが。俺の言ったことにお前が反論するな。」
そう言われると菫は口を噤んだ。
男は普段は堂々と意見を述べる菫が黙ったのを認めると満足そうに笑う。
そして菫の頭頂部の髪を乱暴に掴むとそのまま頭を揺らした。
「…ッ」
男「なあ、また可愛がってやろうか。」
男の声が下衆な色を孕んだ時、菫の同僚である圭太が二人を見付けた。
圭「杉本様…神崎さんが探していました。」
その言葉に杉本は舌打ちをしてから菫を解放した。
圭太は杉本と入れ違う形で菫の元に走り寄って髪を直してやった。