第24章 新たな協力者
その部屋は洋室で、杏寿郎は慣れないふかふかのソファに座りながら隣の男に目を遣った。
男は部屋へ来るまでずっと黙っていた。
蓮「さて、まずは貴方にお伺いしたいわ。」
そう言って視線を送った先はやはり尾行男だった。
男「俺は…悪い事を頼まれたとは思っていません。でも、依頼主に秘密だけは守ると固く約束したんです。…なので、言えません。言いません。」
簡単に口を割ると思っていた蓮華は少し感心したような表情を浮かべた。
蓮「…そうなの。でも『それでは頑張って私の尾行を続けて下さいな。』とは言えないわ。取り敢えず隣室で待っていて下さい。」
あっさりとそう言うと蓮華は立ち上がり、隣室へ繋がるドアを開いた。
男は素直に従って退室した。
蓮「…………。」
蓮華は席に戻ると太腿の上で両手の指を絡め、杏寿郎に穏やかではない表情を向けた。
蓮「…さて、獅子様。刀を此方へ置き、菫お姉様の居場所を教えて下さいませ。」
途中から菫の妹だと勘付いていた杏寿郎は静かな微笑みを浮かべた。
杏「強引に俺を此処へ通したのは、俺を信用していたからではなく、どうしても二人切りでこの話をしたかったからだな。」
蓮「…そうよ。」
蓮華は噛み付きそうな剣幕であったが、初めて菫の家族に会えた杏寿郎は嬉しさが勝って思わず笑顔を浮かべてしまった。